東京高等裁判所 昭和34年(う)2822号 判決
被告人 鈴木二郎
〔抄 録〕
所論は、まず、原判決には事実の誤認があると言い、(一)、原判示にかかる賍品の買受価格は、証人李寿光の原審公判廷における供述および同人の検察官に対する供述調書の記載によつたものであるが、被告人の原審公判廷における供述および検察官に対する供述調書の記載によれば、右は事実と著しく相違すると主張する。しかし、証人李寿光および被告人の各原審公判廷における供述によれば、本件賍品の売買価格については、いずれもその記憶のみに基いて供述しているのであつて、証人李の述べた金額が必ずしも絶対的に正確を期しがたいことは同人の自認するところであると同時に、被告人の述べた金額が全部事実に合致しているとの保障も認められない。ともかくその真実の価格がいずれであるにせよ、賍品の取引価格がしばしば買受人においてその賍品たる情を知つていたかどうかを判定すべき一情況として考慮される場合のあることは別とし、それ自体直接には犯罪の成否に関係を有しないばかりでなく、賍物罪について併科すべき罰金額を定めるについて不法利得額の算定上関係があるとしても、本件における程度の両者の価格の相違は量刑上差異を生じないから、この点に関する誤認はいわゆる判決に影響を及ぼすこと明らかなものとは言えない。
(兼平 足立 関谷)